(……あ……っ)

ふんわりとにおう、恭兄の香水。

チョークを手にとりながら、あたしは少しだけ幸せにひたった。


黒板には、見覚えのある漢字。

あ、コレ恭兄が教えてくれた漢字だ!!


カツカツカツ――…

スムーズに黒板に字を書くと、ちらりと横にいる恭兄をみた。


教科書をみながら、くいっとメガネをなおす。

そのしぐさも、胸をしめつける。


書き終わって動きのないあたしに気づき、黒板をみた。

ふっと、優しく笑う。


「よくできました」

閉じた教科書でポンッと頭をなでた。


「ずりぃー、オレも頭なでてくれっ」

「私もぉー」

「答えがあってたら、いいですよ」

そういいながら、次から解けそうもない難解問題をだす恭兄。


あははっ
やっぱりドSだ――…