「詠葉ぁー、お兄ちゃんね、またお隣さんに帰ってきたんだって」 えっ…… また隣なの? 「よろしくね、詠葉」 そういった恭兄の顔は、仮面をかぶった悪魔のほほえみ。 あたしの野生の本能が危険信号を鳴らしてる。 ……逃げちゃおっと。 「ちょっと詠葉!!! お兄ちゃんに挨拶くらいしなさい」 ギクッ せっかくしらんぷりで上にいこうとしたのに…… 目にみえてわかるくらい、あたしの肩は大きく揺れた。 あたしは廊下からお辞儀をして、さっさと部屋に逃げこんだ。