夜は声にならない涙の音がする。

毎晩どこからか聞こえてくる。


今夜はこの家だ。


ドアをそっとあけて部屋に入り、静かに頬を濡らす彼女のよこに座る。

理由はいらない。

悲しみに寄り添うようにピアノを奏でる。

♪~~♪~♪~~~~♪~~♪~♪

「ありがとう、ピアノマン」

「どういたしまして」

交わす言葉はいつもこれだけ。

そうして彼はまた別の曲を奏でるために姿をけす。


毎晩、毎晩。

毎夜、毎夜。