「この子、うちの前で眠ってたんだ。だから、連れてきた」
「あらまっ!どうぞ、どうぞ、ゆっくりしてって~!」

「―お邪魔します。」

雫は、ちょっとお風呂に入ると、10分程度ですぐ出てきた。
「もういいの?」
「十分だよ。」

「ねぇ、雫ちゃん。あなた、ここまでどうやってきたの?」
「走ってきました。」

「は?」

神宮司グループの会社から、ここまでは、電車を使わないととうてい行けない。
いや、電車を使っても、長旅になるぐらいだろう。
それなのに、雫は走ってきたと言うのだ。

それも、無理はない。だって彼女は、電車の切符もお金も持っていなかったのだから・・・

持ち物は、ただ一つだけ。それは、一枚の写真だった。でも雫は見せようとはしない。

ヨクはその写真に何が写っているのか、知りたくてしょうがなかった。

「さすが、神宮司グループの子・・・・・。ただ者じゃないわね」