その後保健室で先生と二人遅めの昼食をとった。お昼休みが残り僅かだと急いでお弁当を食べる私に、「どうせ午後も此処にいるんだろ。だったらゆっくり食ったって変わんねえよ」そう言った先生はマイペースにコンビニ弁当をつついていて、本当にこの人が教師やってていいのかと疑問を感じずにはいられなかった。勿論、私は昼休み終了のチャイムが鳴る前にきっかりお弁当を食べきった。そんな私を呆れたように先生が見ていたけど、気にしたら終わりだった。
「リコちゃん達、ちゃんとお昼食べられましたかね」
「さあな」
食後の珈琲を楽しんでいる先生はどうでもよさそうに答える。
私は構わず話を続けた。
「先生、聞いてたんでしたっけ? 前に、先生に見られてたあの告白、その二年生の男の子が、リコちゃんの彼氏だったらしいです」
今はもう、顔すら思い出せない、その男の子。
「なんで、私なんですかね」
それは、告白される度に感じていた事で。
「もっと可愛くて、性格の良い女の子はたくさいるのに……」
いつもいつも、不思議だった。
「別に、顔が良くて性格が良いから好きになるってわけじゃねえだろ。第一、顔なんて個人の好みだ」
眉を寄せて珈琲をすする先生も、誰かを好きになった事があるのだろうか。
「先生、私、中学の時いじめられてたんです」
今まで誰にも、両親にすら話した事のない過去の出来事を、何故かふと話したくなった。
先生が聞いていなくても構わない。
「……中学二年の三学期でした。何が原因かは分からないけど、冬休みが明けて、それは急に始まったんです――」
それは本当に急だった。
同じクラスの、ごく普通の女の子が、ある時急にクラスの女子数名にいじめを受け始めた。
その子は普通に明るく友達もいて、いじめられる理由はどこにもなさそうに思えた。しかしその事が、女子の間で自分も何時いじめられても可笑しくないのだという認識を生んでしまったのだ。当然、そんな不安と恐怖を抱えたままいじめをやめさせようとする子なんていなかった。……私以外には。

