恋よりも、



「そう。じゃあ遠慮なく」

女の子達の脇をすり抜けて、中心で泣いている女の子を彼女達から引き離す。

「大丈夫?」

ハンカチを差し出すと、女の子は小さく頷いてから受け取り顔にあてた。俯いているため顔は見えないけれど、この子もバレーのメンバーなのだろう。

「……とりあえず、保健室で休んだら? 今なら加賀先生がいると思うから。大丈夫、加賀先生は信用出来るから。もし何か言われても、私の名前出せば大丈夫だから。……ね?」

背中をさすって、出来るだけ優しく問う。女の子は泣きじゃくりながらも頷いてくれた。
軽く背中を叩いて促すと、女の子はよろよろと保健室に向かって歩き出した。
姿が消えるまでそれを見送ってから、改めて、残った彼女達と向かい合う。

「もう、ああいう事やめてね。何かあったら、加賀先生が動くから」

自分で言っておきながら、それはないなと思った。生徒間の小さな揉め事で動くような人ではない。
だから名前だけ貸して下さいと心の中で先生に断る。

「……なに、それ。先輩、加賀先生にまで色目使ってるんですか?」

けど、リコという女の子は苛っとしたように見当違いな発言をした。どちらかと言うと、此処は教師という存在に怯えて欲しかったのだけど。

「なんでそうなるの……。今頃あの子は保健室に着いて先生に話してるよ。話してなくても、次何かあればきっとあの子は保健室を頼る。そうなったら、加賀先生があなた達の事を知るのも時間の問題でしょうね。それに、あなた達が言うなとあの子を脅しても、私が居るもの。次はないよ」

加賀先生は、最後の最後まで腰を上げないと思うけど。
だから、これはただのはったり。

でも――。

「っ何なんだよ! あたし達は別に、試合に負けて苛々してて、それでっ」

「そうだよっ! 今日は偶々……」

効果は抜群なはずだ。
ただ一つ、心配があるとすればそれは。

先生は、ちゃんとあの子を慰めてあげられてるだろうか。午前中、私が泣いた時にあれだけ困っていた先生。私が先生にしてもらったように、あの子にも……。

チクリ。

――あれ?