恋よりも、



どうやら、中心にいる女の子は泣いているみたいで。俯いた顔から嗚咽が聞こえる。

「目障り。消えてよ」

リコと呼ばれた女の子はおそらくリーダーのような存在なのだろう。茶髪のミディアムヘアーのその子は、壁を蹴っていた女の子で、低い声でとんでもない事を言った。

「……っ」

嗚咽が大きくなる。
それによって雰囲気が一層剣呑なものになっていく。

これ以上はヤバい。
瞬間的にそう思った。
リコって子は何を仕出かすか分からない危うさを持っている。
女の子の精神状態も限界に近い。

「……何してるの?」

気付いたら、声を掛けていた。

張り詰めた空気に、僅かに緊張した自分の声が紛れる。

囲んでいた四人が、一斉にこちらを向いた。

「……あ」

思わず声が漏れたのは、その四人に、特に茶髪でミディアムヘアー……リコと呼ばれた女の子に見覚えがあったからだった。

それは相手も同じようで、目を見開いて私を見ている。

知り合いではないけれど、顔は知っている、そういう存在。

つまり、彼女達は午前中に行ったバレーの一回戦の相手だったのだ。更に、リコという女の子は、試合中私を睨みつけていたあの女の子で、私は少しだけ自分の縁を呪った。

でも、こうしてリンチ……将又(はたまた)イジメの現場に居合わせてしまった以上、相手が誰であろうと関係ない。

視線を女の子達に合わせながら近付いて行く。
いち早く反応したのは、予想通りリコという女の子。

「……原田先輩、ですよね」

おや、と内心驚く。
名前を知られているのは意外だった。

リコという女の子は鋭い目つきで私を睨む。けど、生憎それを怖いと思う程、柔ではない。

彼女以外は、みな不審そうに私を見ている。都合が良い。囲まれていた女の子から、注意が私に向きつつある。

「……その子、もういいでしょう。離してあげて」

そう声を掛けると、リコという女の子は一瞬目を細めたが、すぐに何か思いついたようにニヤリと笑った。

「先輩が相手して下さるんなら、考えてもいいですけど」

私は内心ほくそ笑んだ。彼女の標的は既に私に変わっている。他の女の子は彼女の意思に従うつもりなのだろう、黙って私達を見ていた。