恋よりも、



「相手の二年生、なんか仲間割れしてたよねー。チームプレイなんだから協力しなきゃ勝てるわけないのに」

「そうだね……」

「香月、どうかした?」

タオルで軽く汗を拭きながら、心配そうに訊ねてくる弥代に苦笑する。

「うーん……なんか、試合中相手の二年生の子に睨まれた」

その答えに佑美が嫌そうに顔をしかめた。

「うわー、試合に勝てないからってそれはないでしょ」

「でも私だけだったんだよね……」

「香月、気にしない方がいいわよ。相手には気の毒だけど勝負だもの」

「うん、そうする」

気にしたって仕方ない、その通りだ。試合はもう終わっているのだし。

「じゃあさ、次の試合までまだ少し時間あるからちょっと休もうよ!」

佑美の提案に、弥代と二人笑顔で頷いた。



続く二回戦の相手は一年生で、私達は楽に勝つ事が出来た。

そして三回戦。時間的にこの試合が午前中最後の試合になりそうだ。

試合が始まって早二十分。相手は同じ三年生なのに物凄く強かった。バレー部の子を筆頭に、ほとんどミスがない。また痛いところを的確に攻めてくる。逆に、一セット取られて焦っているこちらのチームはミスが目立ってきている。不味い。何とかしないと、このままじゃあ――。

「香月!」

呼びかけられて、はっと我に返る。


「っ!」

見上げれば、頭上に迫るボール。
手を振り上げ、狙いを定めて、思い切り叩き落とす。

弾かれたボールはネットを通り越し――。相手チームの手をすり抜けた。

「ナイスアタック香月!」

チームの子に、私は笑顔でピースを返した。

その後なんとか流れを持ち直した私達は、見事二セット目を奪う事が出来た。けれど次の三セット目、粘ったもののあと一歩及ばず、三回戦敗退という結果に終わった。
二セット目で踏ん張っただけに、悔しい。涙を流す子を見つめながら、私は唇を噛み締めた。

「よ、お疲れさん」

「せん、せい」

「お前運動できたんだな。俺はてっきり頭だけかと思ってたよ」

片手を上げて現れた先生は、関心したように言った。

「中学の時は運動部でしたから」