『私は何という愚かな弟子だ。』

 何度も床をこぶしで叩いた。円心は、とうとう許しを得ることも破門されることもなくなった自分に、どうしようもない怒りをぶつけた。

『できれば・・・お許しいただけるのなら、この二年間の出来事を和尚様にご報告したかった。』

 円心には、何ともやりきれないせつなさが心に深く残った。そして円心の心に居座ったその想いは、長い年月をかけて美化されて、死ぬまで消えることはなかった。痛切な想いは消えることなく続いていく。来世ではそれが別の形になって現れるとは、このとき円心は思いもよらなかった。