寺の門の前まで来たときである。中へ入るのをためらっていた円心の姿を最初に見つけたのは、兄弟子の円修だった。円修は庭先の落ち葉を竹ぼうきで掃いていた。この二歳年上の兄弟子は、円心を含め五人いる弟子の中で一番の年長者だった。円修は、よく弟子たちを取りまとめる実の兄のような存在だった。若い弟子たちにとって、天寿和尚の教育は時には厳しいものであった。円修はそんなとき、弟弟子たちを陰ながら支えていた。

「円心、よく帰ってきたな。」

 円修はそう言って、円心の頭から足の先までまじまじと見た。円心には、それとわかるたくましい成長の跡がうかがえる。