円心は崖の上からその光景を見ているのだが、「もう一人の自分」がその巨大な玉の中にいるのがわかる。円心はいつしか「もう一人の自分」になって火の玉の外の世界を見ている。地上がどんどん離れているのが見える。旅立ち、別れ、哀しみ、希望・・・いくつかの気持ちが心に浮かんでいる。

 円心は、朝の光が差し込んで幻想の世界が闇と共に消えるまで、いつまでも見とれていた。

「おーい。」

 声に気づいて後ろを振り返ると、無雲がこちらへ向かっていた。

「急にいなくなってどうしたんじゃ。」

 無雲の声がハアハアいっている。