忘れもしない、あれは龍仁と住むようになってまだ間もない頃のことである。ある日曜日、京介の恋人の由香里が訪ねてきた。

 由香里は京介の二歳年下で、大学時代のサークルが縁でつき合いだして今に至っている。由香里の印象を一言で言えば「清楚」であろう。九州から上京して間もない頃の初々しさが、五年経った今もそのまま残されている。由香里のアパートは電車でふた駅の所で、会社に勤めだしてからは日曜日に会うくらいだった。それでも交際が続いているのは、ふわふわした京介にしっかり者の由香里という組み合わせがそうさせているのだろう。由香里にしてみれば、京介を見ていて「この人には私がいてあげなければ」と思わせるのかもしれない。由香里は日曜日に会いに来るごとに掃除・洗濯をして帰ったものだった。