「えんしんよ。」
「あっ。」
円心はそう叫んでいたが声にはならなかった。それは雪深い日、木彫りの大黒天を掘り出した時に、心の中に現れた声だった。あの時ははっきりと声を聞き取ったわけではなかった。しかし円心には、その声の主が大黒天であるとわかった。
円心は気づくと立ち上がって歩き出していた。自分でもどこへ、なぜ歩いていくのかわからない。足が勝手に前へ進んでいる。声の主が歩けと言っている気がした。どこまでも歩いていく。空はいつの間にか朝の気配を含みだした。円心の足元の明るさは、月の光でない、朝の訪れによるものだった。
「あっ。」
円心はそう叫んでいたが声にはならなかった。それは雪深い日、木彫りの大黒天を掘り出した時に、心の中に現れた声だった。あの時ははっきりと声を聞き取ったわけではなかった。しかし円心には、その声の主が大黒天であるとわかった。
円心は気づくと立ち上がって歩き出していた。自分でもどこへ、なぜ歩いていくのかわからない。足が勝手に前へ進んでいる。声の主が歩けと言っている気がした。どこまでも歩いていく。空はいつの間にか朝の気配を含みだした。円心の足元の明るさは、月の光でない、朝の訪れによるものだった。

