「円心殿、察しのとおりじゃ。」
無雲はいつになく多弁になっていた。
「わしら二人は双子の兄弟じゃ。はるか昔は一つの魂じゃった。それが二つに分化した。つまり和魂(にぎたま)のわしと荒魂(あらたま)の兄者の二つにだ。」
円心は聞きながら不動明王を思い浮かべていた。不動明王は大日如来の化身と言われている。その憤怒の形相は、穏やかな大日如来とは似ても似つかぬものである。陰と陽の存在は世の常なのかも知れない。
「兄者は真言密教の門をたたいたが、そのあまりにも激しい気性と底知れぬ能力が故、高野山を追われる身となってしもうた。じゃが國を想い民を想う気持ちは人一倍に強い。それがため、因縁を我が身にかぶってまでもこの度のことを成したというわけじゃよ。」
「兄者とはいつか決着の時が来るような気がしてならぬのじゃ。」
円心は、どんよりと濁った雲の向こうを見やる無雲のまなこの中に、深い宇宙を見た。
無雲はいつになく多弁になっていた。
「わしら二人は双子の兄弟じゃ。はるか昔は一つの魂じゃった。それが二つに分化した。つまり和魂(にぎたま)のわしと荒魂(あらたま)の兄者の二つにだ。」
円心は聞きながら不動明王を思い浮かべていた。不動明王は大日如来の化身と言われている。その憤怒の形相は、穏やかな大日如来とは似ても似つかぬものである。陰と陽の存在は世の常なのかも知れない。
「兄者は真言密教の門をたたいたが、そのあまりにも激しい気性と底知れぬ能力が故、高野山を追われる身となってしもうた。じゃが國を想い民を想う気持ちは人一倍に強い。それがため、因縁を我が身にかぶってまでもこの度のことを成したというわけじゃよ。」
「兄者とはいつか決着の時が来るような気がしてならぬのじゃ。」
円心は、どんよりと濁った雲の向こうを見やる無雲のまなこの中に、深い宇宙を見た。

