しばらくの沈黙が流れた。あたりのけむる雨は、いつしか雨粒の感覚を持ち出した。

『似ている・・・』

 自分の前に対峙している二人を見てそう思った。あの晩は顔などよく見れなかったのだが、今こうして黒衣の行者と無雲を見比べてみると瓜二つである。ただ黒衣に白装束という違いがいっそう浮き立っていた。
 まず、無雲が口を開いた。

「やはり兄者のせいであったか。」

 (カシーン!)

 無雲は六角棒の杖を固い地面にまっすぐ叩きつけた。

「法力で世の中は変わるものではない。いやたとえ変わったとしても因果応報の業(カルマ)を断ち切れるものではない。いくさをこういう形で終わらせても新たな火種は出てきましょうぞ。」