『間違いない。』

そう思った途端、円心は手を合わせたままの状態で動けなくなってしまった。向こうはまだこちらに気づいていない。だが道の真ん中に立ちはだかっていては、気づかれるのも時間の問題であった。無雲はというと、近づいてくる黒い固まりを瞬きもせずにじっと見ている。

「あっ。」

 黒衣の行者が二人にあと何歩という所まで近づいた時であった。突然足が止まり、前傾を止めたその時、顔がはっきり見えた。そして気づいたときには円心は、後ろへどすんと尻もちをついてしまった。円心は、黒衣の行者の放つ〃気〃に、もの凄い風圧を感じた。あまりの醜態ぶりだったが立てない。足に力が入らないのである。円心は二人を見上げる格好になってしまった。黒衣の行者は円心には気にも止めず、無雲の方をまっすぐ見ている。無雲は左手に杖を持ち、これまた石のように固まっている。