また旅が始まった。
 二人は前にもまして寡黙になっていった。だが円心には、以前のような気負いはなかった。旅の中まるで人も自然の一部であるかのように、四季折々の花鳥風月をたのしんだ。
 それは、京の都にほど近い、都大路へと続く街道を歩いていたときのことである。雨はしょうしょうと降っていた。けむるような秋雨は暖かさすら漂わせていた。都に近づくにつれ沿道には人影が目立つようになった。二人は何事かと人々の噂に耳を傾けると、どうやら南朝の天子が京の都へ戻られるらしい。