明くる日から修行の日々が始まった。無雲はというと、「貴殿の行が終えた日に帰る」という言葉と行の仕方を言い残して、またどこへやら旅立ってしまった。無雲の行動は円心の予測をはるかに越えたところにあった。行に入るその日にまた旅立つとしても、今さら不思議でもない。
『無雲殿には無雲殿の考えがあってのことであろう。』
円心はそう思い、行への決意を新たにした。
夜もまだ明けやらぬ時刻、とうとうと滝にうたれる。つらら状にのびた氷の固まりからしたたり落ちる滝のしぶきは、容赦なく円心の体へ降りかかる。手は印を結び、むらさき色になった口で経を唱える。始め突き刺さる矢のように攻撃的だった水のしぶきも、やがて消えていく。肉体の感覚はどんどん遠のいていく。経を唱えながら、その経すらだんだんと聞こえなくなる。あるのは研ぎ澄まされた魂の存在だけだった。
『無雲殿には無雲殿の考えがあってのことであろう。』
円心はそう思い、行への決意を新たにした。
夜もまだ明けやらぬ時刻、とうとうと滝にうたれる。つらら状にのびた氷の固まりからしたたり落ちる滝のしぶきは、容赦なく円心の体へ降りかかる。手は印を結び、むらさき色になった口で経を唱える。始め突き刺さる矢のように攻撃的だった水のしぶきも、やがて消えていく。肉体の感覚はどんどん遠のいていく。経を唱えながら、その経すらだんだんと聞こえなくなる。あるのは研ぎ澄まされた魂の存在だけだった。

