無雲は木彫りの大黒天をまじまじと見つめながらそう言った。もちろんこのとき円心には、後に何百年も経って、この大黒天が誰の手に渡るかなど想像だにできなかった。

「お世話いただいたお礼といっては何ですがこれは差し上げます。」

 円心はそう言って、主人に出来たばかりの大黒天を差し出した。
 二、三日後。あれほどふぶいていたのがうそのように、久方ぶりに冬の青空がのぞいていた。二人は厚く礼を言って農家を後にした。

「これからは厳しい行が待ってるぞ。」

「もとよりそれは承知の上です。」