何か彫れと言われて、心には大黒天が浮かんでいる。なぜ大黒天なのか円心自身にもわからなかった。その大黒天は暗闇の中、こちらを見ている。真っ黒いはずの大黒天が暗闇の中でわずかに光を放っている。口元のかすかな笑みは円心に何かを語りかけているようであった。
「えんしんよ。えんしんよ・・・」
円心は言われるままにのみと槌を借り受け、主人の手つきを見よう見まねで彫りだした。やがて、心像の大黒天と生木を重ね合わせるとのみが勝手に動き出す。無雲は例の小笛を取り出して、吹き始めた。
(こんこんこん・・・ぴゅうろろろ・・・)
のみの音と笛の音色は、一つの生き物のように混じり合っていく。
「えんしんよ。えんしんよ・・・」
円心は言われるままにのみと槌を借り受け、主人の手つきを見よう見まねで彫りだした。やがて、心像の大黒天と生木を重ね合わせるとのみが勝手に動き出す。無雲は例の小笛を取り出して、吹き始めた。
(こんこんこん・・・ぴゅうろろろ・・・)
のみの音と笛の音色は、一つの生き物のように混じり合っていく。

