「わしは、真の世界を知る旅をしている者じゃ。前世でもそうじゃった。そして来世でもそのまた来世でも。見たところわしの目に間違いがなければ、貴殿には常人にはない特別な素質がある。こうして助けてもらったのも何かの縁じゃろう。いっしょに旅をしてみてはどうかのう円心殿。」
無雲の大きい目が鋭く光ったように見えた。円心には一瞬の迷いがあった。沈黙がそれを物語っていた。円心には約束された将来があった。師である天寿は、いち早く円心の才知を見抜いていた。そして、ひとかたならぬ情熱を傾け、立派な僧になるための教育を円心に施してきた。また円心もよくそれに応えてきた。そしてこの度、総本山への推挙がかなおうとしていた。
「いや、私は天寿和尚にかけていただいたご恩を忘れるわけにはいきません。」
円心は自分に言い聞かせるように言った。
無雲の大きい目が鋭く光ったように見えた。円心には一瞬の迷いがあった。沈黙がそれを物語っていた。円心には約束された将来があった。師である天寿は、いち早く円心の才知を見抜いていた。そして、ひとかたならぬ情熱を傾け、立派な僧になるための教育を円心に施してきた。また円心もよくそれに応えてきた。そしてこの度、総本山への推挙がかなおうとしていた。
「いや、私は天寿和尚にかけていただいたご恩を忘れるわけにはいきません。」
円心は自分に言い聞かせるように言った。

