『それに円心とやらは何のつもりだろう?』 

なかば禅問答のようないきさつに京介は言葉に窮した。そんな京介にお構いなしに龍仁は続けた。

「人によっては一生のうちでたった一瞬だけ時間のずれを垣間見る瞬間が来るんだ。ただ、ほとんどの人が何事もなかったかのように通り過ぎていくけどね。しかし円心はそれを気づかせた。いや、正確には京介がそれに気づいたと言った方がいいだろう。円心は京介なのだから。」

「・・・」

「まあ、夢の中で、『これは夢だ』と気づくようなものとでも言ったらいいかなあ。」