箱を開けると紫色の包みが出てきた。
「それが何年、何十年、何百年と経った今も持ち主が現れないままあずかっているという訳なんです。その人物というのが・・・」
「山伏の姿をしていたわけですね。」
龍仁がそう言うと神主は言いかけた言葉を引っ込めて、狐につままれたように龍仁の顔を見た。
「・・・そうです。」
やがて紫の布から小笛が現れた。竹製の黒光りのするそれは、年月が経っている割には保存状態がよかったのであろう。今でも現役として使えるのが見て取れた。持ち主が使い込んだ後なのか、六つの小さい穴のまわりだけ、わずかながら変色している。何百年もの時代を超えて目の前にあるその小笛は、見ているだけで持ち主の姿を彷彿とさせた。
「これだ!」
吉村は、身を乗り出してそう叫んでいた。由香里は、瞬きもせず黙って小笛を凝視していた。龍仁はというと膠着したまま動かない。頬からは涙が伝っている。その涙を拭いもせずに小笛を見つめている。京介はそんな龍仁の表情を見るのは初めてだった。いつも人生の何事かを悟っているかのように冷静な龍仁が、周りも気にせず大粒の涙を流している。
「さ、どうぞ手にとって見てください。」
神主は龍仁のただならぬ様子を見て、請われるまでもなく小笛を龍仁に渡した。龍仁は黙って小笛を受け取ると竹の感覚を確かめていた。小笛を持つ指先がわずかながら震えているのがわかる。龍仁の心眼は今、開かれた。一生をかけて追い求めていた物にやっと出会えた。そうした安堵感が心の中にわいてきた。
「それが何年、何十年、何百年と経った今も持ち主が現れないままあずかっているという訳なんです。その人物というのが・・・」
「山伏の姿をしていたわけですね。」
龍仁がそう言うと神主は言いかけた言葉を引っ込めて、狐につままれたように龍仁の顔を見た。
「・・・そうです。」
やがて紫の布から小笛が現れた。竹製の黒光りのするそれは、年月が経っている割には保存状態がよかったのであろう。今でも現役として使えるのが見て取れた。持ち主が使い込んだ後なのか、六つの小さい穴のまわりだけ、わずかながら変色している。何百年もの時代を超えて目の前にあるその小笛は、見ているだけで持ち主の姿を彷彿とさせた。
「これだ!」
吉村は、身を乗り出してそう叫んでいた。由香里は、瞬きもせず黙って小笛を凝視していた。龍仁はというと膠着したまま動かない。頬からは涙が伝っている。その涙を拭いもせずに小笛を見つめている。京介はそんな龍仁の表情を見るのは初めてだった。いつも人生の何事かを悟っているかのように冷静な龍仁が、周りも気にせず大粒の涙を流している。
「さ、どうぞ手にとって見てください。」
神主は龍仁のただならぬ様子を見て、請われるまでもなく小笛を龍仁に渡した。龍仁は黙って小笛を受け取ると竹の感覚を確かめていた。小笛を持つ指先がわずかながら震えているのがわかる。龍仁の心眼は今、開かれた。一生をかけて追い求めていた物にやっと出会えた。そうした安堵感が心の中にわいてきた。

