「京介さん。私はどうにも身動きがとれない。私に代わって小笛を見つけだしてくれませんか。あなたが心眼が開いたことは、まだ気づかれていないような気がするんです。」

「わかった。やってみるよ。」

「見つけ出したら連絡ください。」

 そういって電話は切れた。京介は携帯をしまうとあらためて周りを見まわした。まばらになった店内は時折OLたちの談笑が聞こえるだけで怪しい人物はいなかった。

『さてどうしようか・・・』

 吉村には「やってみる」と言ってはみたものの、何かあてがあるわけではなかった。数百年前の小笛など、この世に存在していない可能性の方が高い。万一あったとしてもどうやって見つけろというんだ。それはどこまでも続く砂浜から、一粒の砂を拾い上げるのに等しい気がした。龍仁でさえ見つけられないものを何の手がかりもなしに見つけられるのか?京介はどうしようもない無力感に包まれた。