正面の中年男性が黙々と食事をとっている。京介は空腹でないわけではなかったが、食べる気にはなれなかった。それでもランチを注文したのは周りにコーヒーだけで居座るのが気まずいような雰囲気があったからだった。食事が運ばれてくると、京介はそれをゆっくり口にした。相席の男性は食べ終わるとあわただしく席を立った。その間にも京介は、つとめて他人と視線を合わせないようにした。

『ひょっとして龍さんがいなくなったのは僕のせいなのか。』

 油断しているとあらぬ不安がふと頭をもたげてくる。

『あっ、いかん。なにも考えないようにするのが一番だ。とにかく吉村君が来るのを待とう。』

 京介は不安に駆られそうになる自分を懸命に監視していた。