そこは古美術店のようであった。見たこともない中国風の壺、戦国の合戦の絵巻物、古代ローマの人物のようなものが描かれたつぶれかかったコイン、・・・せまいフロアーに所せましと並べられている珍品の数々。壁という壁に埋め尽くされている品々の織りなす色合いは、子供の頃の夏祭りの夜店を思い起こさせた。小遣いを手に握りしめ、何を買おうかと胸をワクワクさせる感情がよみがえってくる。ほんとうに何時間見ても飽きない。龍仁は骨董品にも明るく、それがサイドビジネスになっていた。ただ、ふつうの目利きとは幾分異なっていた。骨董品の中にはその持ち主の念が込められている場合がある。いくら値段が高価で価値があるとされている物でも、不幸をもたらす物はいくらでもある。龍仁はそれを見分ける能力を持っていた。龍仁の店は、知る人ぞ知る幸運をもたらす骨董屋だった。
熱心に見回していた京介のもとへ、やがて龍仁が入ってきた。
熱心に見回していた京介のもとへ、やがて龍仁が入ってきた。

