「その掛け軸なんですけど、今私の手元にあるんです。」

「・・・」

「実は心眼が開くきっかけになったのが、私の場合掛け軸だったんです。最初は龍仁さんの骨董屋に客として行った時、偶然見かけたんですけどね。」

「そうするとやっぱり龍さんが一枚かんでいたのか。」

「どうやら龍仁さんと京介さんと私の三人は、何か特別な縁があるみたいですね。龍仁さんが室町時代、無雲と言う山伏だった頃からの縁ですからね。」

「そうか。そうだったのか!」

 龍仁が無雲だったと聞かされ、もつれた糸がほどけるような思いだった。

『だから龍さんは、何でも僕にいろいろと優しくしてくれていたのか・・・』

 京介は人の縁の不思議さをあらためて感じずにはいられなかった。

「それで心眼が開くであろう僕を気遣って、龍さんは君をよこしたというわけだな。」