「一休宗純です。」

「え?」

 京介はその名前を聞いた時、すぐには誰のことかわからなかった。円心の時の記憶に遡ってその名前の主を捜してみる。

「・・・あぁそうか。円心が智海寺の住職だった時出会ったあの若者か。」

「思い出していただけましたね。私はかつて自殺しようとしてあなたに助けてもらった。それで今度は私があなたを助ける番だと思ってるんですよ。数百年ほど遅れましたけどね。ははは。」

 コーヒーのおかわりが運ばれてきた。京介には、目の前で笑っている吉村の姿があの明朗快活な宗純の姿に見えた。

「あのとき円心であるあなたが書いた、掛け軸のことを覚えていますか。」

「うん。あれがもとで後でえらい目にあったからな。」