『京介・・・やっと出会えましたな。』

 円心は少し笑っている風であった。それは京介の心眼が開く瞬間だった。心の奥深くで決して開かれるはずのない扉が、今開いた。
京介はついこの前まで、その扉の存在すら知らなかった。しかし扉の向こうの円心はあきらめなかった。「真の世界を知る」という円心の想いは、ついに未来の自分である京介に通じた。京介は、自分という存在の何たるかを知る思いがした。そして生きていることの意味がわかったような気がした。京介は大黒天にうつし出される円心の姿を、しばし見つめていた。