自分探しの旅

『まさか、つけられてるんじゃ・・・さっきの男の仲間なのか?』

今度は電車の中よりも状況が悪すぎた。

『いざ取っ組み合いの格闘になった時、このプロレスラーのような大男にかなうはずがないじゃないか。それとも後ろを振り向いて目と目が合えば、いきなりナイフでドスンとやられるのか?』

 京介は身震いした。

『この危機をどうやって抜け出せるというんだ。』

 いい考えが浮かばなかった。少なくとも、自分が相手の存在に気づいたことを悟られない方が、得策のような気がした。目の前の信号が赤になった。京介は自然を装って立ち止まった。すると間隔をつめることもなく足音も止まった。

『まちがいない。』

 京介はその不自然な動きを見逃さなかった。