(ドックン、ドックン・・・)

 心臓の鼓動がバイブと連動した。首筋の血管がふくれてきた。京介は、視線の主が電話をかけているような妄想に襲われた。

(ブルブルブルブル・・・・)

 それはしばらく鳴り続けたが、やがてあきらめてしまったのか、止まった。京介はポケットからおそるおそる電話を取り出し、着信履歴を見た。

〈賀茂龍仁〉

『しまった!龍さんからだったのか。』

 急ぎ電話してみるが、電池切れの表示が点滅する。電池は最後の力を振り絞って呼び鈴をならすが、そこで途絶えた。最後のブチッという音が、蜘蛛の糸を切られるような音に聞こえた。後は奈落の底が口を開けて待っている。