『なぜ龍さんは、最後の場面のところで前世療法を切り上げたんだろう。円心は七十歳まで生きたということは、残りの人生はどうしたんだろう。』

『それに大黒天が度々出てきたが、何か意味があるのだろうか。』

 車内は最初、隣に立っている人に押されるほど混んでいたが、一駅一駅ドアが開くごとに人の数が減っていった。京介の疑問はさらに続いた。

『そして・・・そしてあの黒衣の行者は・・・』

 その時、寺で座禅を組んでいた円心に襲いかかったあの恐怖が、突然京介の中でリプレイした。吊革を持っている両手にぎゅっと力が入る。一瞬だけ気を失いそうになる。

『待て。自分は自分じゃないか。今の出目は7なんだ。恐れることはない。』

 京介は奈落の底に突き落とされそうになろうとするのをかろうじて持ちこたえて、冷静さを保とうとした。その時だった。