「そうすると僕は多重人格者にでもなったというんですか。」

「いや、それは違うな。」

 龍仁は首を横に振った。

「人格の話をするとこれまたややこしくなるが、ズバリ言って人格は一つだ。魂は一つだと言ってもいい。擬似的なケースは別として完全な多重人格者の場合は、殺人を犯す『自分』と仏様のような『自分』は別の魂ということになる。そのもともと別の魂だったものが一つの乗り物、つまり肉体に宿っている状態が多重人格だ。決してその別の魂は一緒になることはない。」

「・・・」

「しかし京介の場合、魂は一つなんだ。京介は京介でもあり、円心でもある。だが現在の出目は、あくまでも7の京介なんだ。だから一つの肉体で円心が京介にとって代わったり、なんて事はあり得ない。」