「ちょっとここで待っててくれ。」

 龍仁は部屋を出ると、やがて冷えた缶コーヒーを二つ持って戻ってきた。京介は黙ってコーヒーを受け取り、ごくごくと音を立てて飲んだ。

「ふーっ。」

「どうだい、落ち着いたか。」


 まだ頭の中では、円心の目を通してみてきた円心の一生の様々な情景が、ぐるぐるまわっている。京介はその一つ一つを順に追っていった。天寿と過ごした寺での日々。無雲との出会い。そして様々な出来事の後、住職になって宗純とも出会う・・・

『・・・そして・・・そして・・・』

「あっ。あのとき見たものは・・・」

 京介は、現在に帰ってくる最後の場面で見たものを思い出した。