『そうかあの時の・・・』

 円心は目の前の無雲が、あの時の黒衣の行者だったことに気づいた。気づいたときにはあのすさまじい〃気〃が円心に襲いかかった。

『私としたことが・・』

 円心は悔やんでみたが遅かった。この掛け軸にどういう意味があるのかは分からない。だが、ここまで必死になるところをみると、何か重大な意味があることは間違いない。手につかんでいる掛け軸を守ろうとするが力が入らない。

「無雲。お主はどこまでわしのじゃまをすれば気が済むのだ。ふっ、ふっ。だがもう遅いぞ。」