「いや、いや。何か気にさわることでもあったんじゃろう。はっ、はっ。」

 無雲は笑って見せた。

「本当にこんなものでよかったのですかな。無雲殿に差し上げるのであれば、もそっと練習でもしていたものを。」

 円心はそう言いながら掛け軸の紐を綴じた。そして今まさに、渡そうとしたその時である。

「待たれい!」

 誰かの大声がする。

「円心殿。」

 次にその声がした時は、庭先にその声の主が姿を現した。