「ごらんの通り、本堂があまりにもがらんとしているものですから。」

「円心殿、よかったらその掛け軸をわしに下さらぬか。」

「えっ?」

 円心は変なことを頼むものだと思い無雲の方を向きなおした。

「ぜひともその掛け軸を頂きたい。」
 
 円心は断る理由もなかった。

「こんな物でよかったら。」

 そう言って立ち上がって、掛け軸を取ろうとした。