「総本山に行って僧籍を聞けば、ここに行き着きましょうな。」
円心は自分で出した問いかけに自分で答えていた。それから昔話に花を咲かせたが、無雲はつとめて無口だった。時々、「うん、うん」とうなずいたり、笑って返事をにごした。話の最中も無雲の視線は、円心の背後の方にちらちらと注がれる。
「あっ。これは気づきませんでした。」
円心はふと思い出したように後ろを振り向いた。そこには本尊の置かれていた台座と、例の掛け軸があった。古びた壁に真新しい掛け軸が、白く輝いている。「いさりびの・・・」の歌の右下には「円心」の文字が書かれている。
円心は自分で出した問いかけに自分で答えていた。それから昔話に花を咲かせたが、無雲はつとめて無口だった。時々、「うん、うん」とうなずいたり、笑って返事をにごした。話の最中も無雲の視線は、円心の背後の方にちらちらと注がれる。
「あっ。これは気づきませんでした。」
円心はふと思い出したように後ろを振り向いた。そこには本尊の置かれていた台座と、例の掛け軸があった。古びた壁に真新しい掛け軸が、白く輝いている。「いさりびの・・・」の歌の右下には「円心」の文字が書かれている。

