門の前には、白装束の山伏の姿があった。そこには確かに無雲がいた。五十を過ぎて、頭には白いものが混じり、日焼けした顔には深いしわが刻まれていた。しかし、達磨のようなギョロッとした目に、太い眉は昔のままだった。

「おぉ、無雲殿。お久しぶりですな。お元気で何よりです。」

「いやいや、円心殿こそ。立派な僧侶になられて何よりじゃわい。」

「ささ、立ち話も何ですから中へ。」

 円心はそう言って無雲を寺の中へ入れた。本堂にはいると円心は一つしかない座布団を無雲に勧め、例の掛け軸を背に座った。本堂の戸は開け放たれ、庭には先ほど円心が耕していた畑が見える。宗純は円心の後ろに下がって座っている。