円心は、宗純の心の中がまるで手に取るようによく分かった。二十年前のあの時の無雲がそうだった。無雲は円心が詠んだ歌を見るやすべてを理解した。そして今、円心は無雲の境地に近づいたような気がした。それとともに昔、無雲が言っていた言葉を思い出した。無雲は「自分は兄者とはるか昔、同じ魂だった。それが和魂(にぎたま)と荒魂(あらたま)の二つに分化した。」と言っていた。宗純と出会った日、円心は宗純の心の中を垣間見、一瞬にして同じ悲しみを理解した。

『私と宗純もまた、もともと根っこが同じ魂だったかも知れないな。』

「ふっ、ふっ。」

 円心は宗純のおどろく顔を見て笑った。

『ただし、私と宗純は同じ和魂どうしのようだ。』