円心は掛け軸の前に正座し、しばし黙想した。そして筆をとると一気に書き始めた。傍らには宗純が見守っている。

  いさりびの 
  あかきみたまに
  ひとのよの
  ともというべの
  あそのいでたち

 円心は二十年前に阿蘇で詠んだ歌を書き出した。そこには、来世の存在を見通した自分の思いが込められている。