「辛かったのう。」
円心の言葉とただならぬ様子に若者は心を開き、ぽつりぽつりと自分のことを話し始めた。
名を宗純ということ。一生の師として敬愛して止まなかった謙翁和尚を亡くし、生きる支えを失ってしまったこと。途方に暮れ寺を飛び出して来たこと。
―宗純とは一休宗純禅師のことである。「一休さん」と言えばとんちで有名だが、円熟味を増した後半生は、当代第一級の禅僧としても知られた。だが奇行が多く、当時の「まともな」僧たちからは、破戒僧として疎まれていた。その思想哲学はとても常人の及ぶところのものではなかった。そんな一休も、若い頃は純粋な青年であった。
円心の言葉とただならぬ様子に若者は心を開き、ぽつりぽつりと自分のことを話し始めた。
名を宗純ということ。一生の師として敬愛して止まなかった謙翁和尚を亡くし、生きる支えを失ってしまったこと。途方に暮れ寺を飛び出して来たこと。
―宗純とは一休宗純禅師のことである。「一休さん」と言えばとんちで有名だが、円熟味を増した後半生は、当代第一級の禅僧としても知られた。だが奇行が多く、当時の「まともな」僧たちからは、破戒僧として疎まれていた。その思想哲学はとても常人の及ぶところのものではなかった。そんな一休も、若い頃は純粋な青年であった。

