「落ち着かれましたかな」

 円心はそう言いながら若者の前にゆっくり座ると、肩に掛けた手ぬぐいで顔を拭いた。若者はその問いかけに答えようともせず、下を向いたままじっとしていた。
 長い沈黙が流れた。円心はうつむいたままの若者の顔をじっと見ていた。色白で端整な顔立ちはまだあどけなさを残しているものの、どこか凛とした品の良さを感じさせる。

『この歳で死に急ぐとは何があったのだ。』

 円心はそう思ったが、憔悴しきっている若者を前に声をかけきれずにいた。