「あったり前でしょ!」

「・・当たり前、なんですか。」


サラが呆れたように私のあちこち寝癖のついた真っ赤な髪を櫛ですく。


「お祖父様に聞いたって話してくれないんだから、彼らに聞くしかないじゃない!」


「お嬢様に激甘の伯爵に聞いて答えてくれないなら、彼らに聞いたところで無駄な努力なんじゃありません?」



「・・それは、話してくれないってこと?
それとも、私の色仕掛けが効かないってこと?」


「─まぁ両方に決まってますが。」


「ひっど「それより今日も朝食を抜かれるおつもりですか?」


言葉を遮られたことに少しショックを受けながら答える。


「うん。少しでも痩せたいし。」





「外側へ行ったきり連絡も寄越さないような薄情な男のことなんて、早く忘れてしまえばいいのに!」



私付きのメイドで乳姉妹でもあるサラは、昔からラグのことが好きではない。

ラグからの連絡が途絶えてからは、それに一層拍車がかかった気がする。




「でもね、待ってるって約束したのよ。」


そう、約束したのだ。
─彼と




「そんなこと言ってるからいきおくれるんですよ。」

サラから容赦なく突っ込まれる。


それを言われると辛い。


この国の貴族の令嬢の結婚適齢期は、だいたい16歳くらい。もしくは、もっと早い子もいるらしい。


大体は、10歳を過ぎるころに婚約をしている。




な の に ・・

アラナは、17歳になっても結婚どころか婚約すらしていない。


大貴族らしからぬことだ。

お祖父様には、申し訳ないが、それでも どうしても諦められなかった。