総悟は、私の手を引いて、
エレベーターに乗った。
終始、私の表情をうかがうように、
視点をあっちこっちに変えていた。
エレベーターは、7階で止まり、
総悟はまた背を向けてエレベーターを降りた。
そして、701と書かれた部屋の扉を開けた。
「入れよ」
「うん」
部屋の中に入り、
靴を脱いで、リビングの方へ歩く。
総悟は、ジャージを脱いで、
体操着だけになった。
「そこ座って待ってろ」
ソファを、指差す。
言われるがままに、私はソファに腰掛けた。
家の中は静かで、時計の針の音だけが微かに響いていた。
親、今いないのかな?
共働きでもしてるんだろうか?
棚に視線をやると、総悟のお父さんとお母さんらしき人が写っている写真立てがあった。
へぇ、総悟、お母さん似なんだ。
写真をまじまじと見つめながら、そう思った。
「何見てんだよ」
後ろから声がして、ビクッとした。
振り向くと、両手にコーヒーのカップを持っている総悟が、
眉間に皺を寄せて、私を見ていた。
「なんだ、総悟か…」
「なんだじゃねェよ。人様の大事なモン、変な目して見やがって」
「別に、変な目で見てたわけじゃ…」
「ニヤニヤしながら、見てたのはどこのどいつだよ」
「…多分…私です」

