……あれからどれくらい時間がたっただろう。 体が動かなかった。どうしたことだろう。
やっぱり、さっき飲んだ薬がまずかったんだ。


目が開きそうだった。


……なんだか、明るくなったようだった。


病院だろうか…。

…しかし、目を開けた私を待ち受けていたのは全く想像と異なったものだった。


「……?」


がたん、ごとん、と淡々とした調子の揺れ。


ふかふかな椅子。



私は電車の中にいた。



「……えっ…?!?!。」


車窓からは見たこともない風景が広がっていた。
雲ひとつない空だった。みずみずしい草。くっきりした山。 (都会から見える山はスモックでぼやけている)

「ブロッコリー山だ。」
「…?!?!。」

隣でコータがいた。久しぶりに見るコータが、私のほうをニタニタ笑って見ていた。

「…ブロッコリー…山?。」
「ブロッコリーっぽくない?あの山。」
綺麗な黒い目。
間違いなくコータだった。

「コータ…。」

手をつかまれ、ぎゅうっと握られた。
「コータ…いたい…。」
ふと向かいに座っているおばあさんと目があった。
周りを見ると、人は少ないが みんな笑いながらこちらを見ていた。