「師匠ぉ〜っ、
魚焼けましたよぉ〜っ」



山中にぽつんと建つ、
ピンク色のペインティングを施された派手な掘っ建て小屋。


とある魔法使いの師弟2人組が暮らす家である。



「しぃ〜しょ〜お〜っ!」


静かな夜の山に大声が響き渡ると、鈍い音を立てながらピンク色のくたびれたドアが口を開く。



ギギィ…



「ったく、んなデカイ声出さなくても聞こえてるっつーんだよ…」



「だってモタモタしてたら魚くろ焦げになっちゃいますよ。

あたしがせっかく苦労して採って来たのに」



「だったらそこだけ時間止めときゃいいだろ。

お前だって一応魔法使いの端くれなんだから」



「あ、あたしがそんな高度な魔法使えるワケないじゃないですかっ、

てゆーか、どのみちそんな下らない事の為に魔法使っちゃダメですってば!」



「あ〜あいあい、わかってるよ。ちょっと言ってみただけだって。


…まぁ確かに魔法なんてのはそうそう使うもんじゃないわな。

あんなに疲れるもんは他にはねえからな」



「そうですよ、師匠は特に気をつけて下さいね。
もう30過ぎの立派な中年なんだから」



「いやいや、ちょっと待て。それを言うならお前だってそうだぜ?

なんせ14歳てのは体が急速に成長する大事な時期だからな。

魔法なんて負担かかるもんを多用したら、下手したら身体の成長を妨げる事にもなりかねねえ。

お前なんか身長低いんだから特に気をつけないと」



「ですよねぇ」



………




「師匠…あたし達魔法使いの意味なくないですか…?」



「………」



「い、いや、まぁあれだ…

何事も適度に、って事だ。

世の中にはおれ達以外にも魔法使いはたくさんいるが、

中にはガキの頃から魔法使いまくってんのに120歳になっても生きてるじいさんだっている。


つまり魔法自体が害だとは一概には言いきれんわけだ。

だが、多少なりとも身体に負担がかかるのは確実だから使い過ぎには充分気をつけましょう、と、

まぁそういう話しだな」