溺愛コンプレックス

お母さんは、あったかいスープを作ってくると言って、涙をぬぐいながら階段を下りた。

部屋には、私と、カナメが残った。


「…こんなはずじゃなかったのに」

カナメは小さい声でつぶやいた。

「ツバキが成人して、精神的にも落ち着いた年ごろになってから教えるつもりだったんだ。それなのに…」

「カナメ…もういいよ」

「俺は、心の底で喜んでる」

え…?

「もう限界だったんだ。こんなに近くにいるのに、弟でしかいられない。すぐ横で笑ってるのにキスもできない…」

カナメはベッドに腰を下ろした。

「やっと男として、ツバキに触れられる…」

長い指が、私の頬に触れた。