溺愛コンプレックス



「当たり前じゃない」

お母さんも涙で顔がぐしゃぐしゃになる。

「血なんて関係ない。私たちは親子なの!誰にも渡したりしない、大切な大切な…娘よ」

「おかあさ…ん」

私は身体を起こして、お母さんに抱きついた。

温かくて柔らかい、お母さん…


「愛してるわ、ツバキ…」


そう、何でもない日常の一瞬が愛しく思える理由が、今はっきりと分かった。

真っ暗闇の中で誰にも関心を持たれずに過ごしていた、あの記憶を、私はやっぱり覚えていたんだ。
だから、何でもない日常が、暗闇にいた私にとっては幸せなことだと思えたんだ…

「…おかあさん…、柔らかいね…」

お母さんは、さらに強く、私を抱き締めた。