溺愛コンプレックス



「取り乱してごめんね」

放課後、落ち着きを取り戻した私は、アキナに謝った。

「いいよ、親友でしょ。あたしたち」


「うん…、ありがとう」


アキナは私のゆがんだ制服のネクタイを直すと、背中をたたいた。

「ほら、今日はもう帰りな。あたしは図書館に用事あるからさ」

私はうなずいて、帰り支度を始めた。




私が、かばんを持って学校を出ようとした時…

校舎の2階の窓に、カナメの姿を見つけた。

カナメはゆっくり図書館に向かって歩いて行った。


『あたしは図書館に用事あるからさ…』

アキナがそんなことを言っていたのを思い出した。